労働力不足解決の新戦略:アイリスオーヤマの戦略的M&A
アイリスオーヤマが2026年1月29日付でSEQSENSE株式会社の株式を取得し、グループ化を完了した。この買収により、アイリスグループは警備ロボット事業に新規参入し、清掃ロボットに続く第二の柱として位置づける戦略的な意味を持つ。日本の深刻な労働力不足を背景に、ロボティクス技術による社会課題解決を目指す注目の企業統合が実現した。
買収の詳細とSEQSENSEの実力
SEQSENSE株式会社は2016年10月3日に設立され、東京都中央区に本社を構えるロボットメーカーだ。2024年には警備ロボットにおけるメーカーシェアNo.1を獲得しており、その技術力は業界でも高く評価されている。
同社の自律移動型警備ロボット「SQ-2」は、独自の3次元センサーを搭載し、警備対象物件の詳細な3次元マッピングや、移動歩行者をはじめとする動体の発見、環境変化の検出を行える。クラウドシステムとの連携により警備拠点から遠隔で巡回などの警備業務を行える高度な技術を持つ。
SQ-2の導入実績と実証
SQ-2の実績は目覚ましく、官公庁や公共施設、大規模な空港・商業施設などに導入されている。具体的には以下の施設での運用が確認されている:
- 東京都庁第二本庁舎で本導入
- 虎ノ門ヒルズ ステーションタワーで本格稼働開始、約30フロアを巡回
- JR西日本の新大阪駅、JR難波駅での運用開始
- NECネッツエスアイ本社ビルでの本格稼働
ビジネス視点:巨大市場への参入意義
日本国内の警備業界における市場規模は約3.5兆円と巨大であり、アイリスオーヤマにとって大きな成長機会を意味する。その業務は「24時間365日」体制での運用が必須で、夜間業務や危険業務などの過酷な労働環境から人手が慢性的に不足している状況だ。
アイリスグループは2020年にロボティクス事業に参入し、サービスロボットの累計導入社数は7,000社を超え、業務用清掃ロボットにおけるベンダーシェアは2023年から2年連続で1位を達成している。この実績を基盤に、警備ロボット分野への本格展開を図る戦略的意図が明確だ。
シナジー効果への期待
SEQSENSEの「開発力」とアイリスグループの強みである「企画・調達・製造・販売力」を掛け合わせて、警備ロボットをスピーディに開発・製造・提供できることに加えて、コスト競争力も強化することが期待される。
消費者・生活者への影響
この買収により、一般生活者が日常的に利用する施設での警備体制が大きく変わる可能性がある。SQ-2は巡回、立哨、動哨がまとめてできる死角のない自律移動型警備ロボットとして機能し、24時間連続の監視業務が可能だ。
商業施設やオフィスビル、駅などでの警備ロボット導入により、従来の警備員では対応困難だった時間帯や場所での監視が可能となり、利用者の安全性向上が期待される。SQ-2には事前に設定した音声アナウンスを再生する「声かけ再生」機能が搭載されており、迷惑行為や禁止行為の抑止にも寄与する。
業界専門家の見解と技術的優位性
SQ-2は、3次元センサー技術・自己位置推定アルゴリズム・リアルタイム経路計画アルゴリズムなど高度なテクノロジーを駆使することで生まれた自律移動型の警備ロボットだ。独自のSQ LiDARの搭載により、これまでにない広視野角を実現し、警備対象物件の詳細な三次元マッピング、障害物や歩行者をはじめとする移動物体の発見、環境変化の検出をすることが可能である。
技術面では、ロボットから送られてきた情報はすべてクラウド上に蓄積され、巡回結果のレポート作成や、ロボットに搭載されたカメラのストリーミング動画の録画再生といった機能をいつでも利用できる点が評価されている。
社会課題への対応
全警備員のうち47%が60歳以上と高齢化が深刻化しており、安定的な労働力の確保と安全な警備体制の構築が急務な状況にある。この深刻な人材不足問題に対し、ロボット技術を活用した解決策が求められている。
警備の基本となる内部巡回では、不審な人がいないか、防災設備に問題がないかなどを目視で確認し、問題を未然に防いでいるが、SQ-2がこの部分を代替してくれることで、ロボットが巡回している間に落とし物台帳登録などの事務処理を済ませるといったマルチタスク処理が可能になる。
今後の展望と成長戦略
アイリスグループは清掃にとどまらない労働力不足の解決に向けた幅広いサービスの展開を目指している。警備ロボットの普及を通じて、警備業界における慢性的な労働力不足や警備の安全確保といった社会課題の解決に貢献していく方針だ。
今回の買収により、清掃ロボットで培ったノウハウと販売網を活用し、警備ロボット市場での急速な拡大が期待される。2025年10月には、ソフトウェアとハードウェアの双方を完全内製したDX清掃ロボット「JILBY」を発表するなど、ロボットメーカーとしての技術力も向上している。
国際競争力の強化
日本の警備ロボット市場は世界的にも注目されており、今回の統合により技術開発力と市場展開力の両面で国際競争力の強化が図られると見られる。特に、人口減少が進む先進国市場への展開可能性も広がる。
まとめ
- 戦略的買収:アイリスオーヤマが警備ロボットシェアNo.1のSEQSENSEを買収し、約3.5兆円市場への本格参入を果たした
- 技術的優位性:独自の3DLiDAR技術を持つSQ-2が虎ノ門ヒルズ、東京都庁、JR西日本駅構内など主要施設で実績を重ねている
- 社会課題解決:警備員の47%が60歳以上という高齢化問題と慢性的人手不足に対し、24時間365日稼働可能なロボット技術で対応する
参考情報
- アイリスグループが「SQ-2」のSEQSENSE買収、警備ロボット事業に新規参入 | ロボスタ
- 警備ロボットメーカーシェアNo.1のSEQSENSE株式会社の株式を取得しグループ化 | アイリスオーヤマ株式会社のプレスリリース
- アイリスオーヤマ、警備ロボットメーカーのSEQSENSEを買収|M&Aニュース
- 虎ノ門ヒルズ ステーションタワーにて警備ロボット「SQ-2」の本格稼働を開始
- SEQSENSEの自律移動型警備ロボット「SQ-2」、東京都庁第二本庁舎に本導入
著者プロフィール
伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ
株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー
IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。
夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。
