国産基地局産業の終焉を告げる決定
NECはスマートフォンなど向けの既存通信規格の基地局について機器開発を中止する。ソフトウエア分野に開発を絞りこむ。この決定は、NTTドコモが国内ベンダーを主力とした基地局の調達から転換し、スウェーデン・エリクソンの基地局をエリア単位で入れるようになったことが決定的な要因となった。
さらに、基地局事業へ再参入を果たしたばかりの京セラが基地局事業を断念したことが明らかになったことで、国内通信機器産業の急激な縮小が鮮明となった。これまで日本の通信インフラを支えてきた「電電ファミリー」と呼ばれる企業群の存在感が急速に薄れつつある。
NTTドコモの方針転換が引き金に
NTTドコモが2024年9月の「NTT IR DAY 2024」でネットワーク装置の高性能化とコスト効率化を宣言。広く国内外の基地局ベンダーから高性能で効率の良い最新型装置を調達するとした。
ドコモ関係者によると、「これからSub6(6GHz以下の周波数帯)対応の基地局を増やしていく必要があるが、国内ベンダーの基地局は古くて重く置けない。工事に手間とコストがかかるため、エリクソンの基地局に置き換えていく」とのことで、技術面でも国内メーカーの劣勢が明らかになった。
市場シェアの現実
世界の基地局市場全体から見ると、日本の通信機器ベンダーのシェアはいずれも2桁に届かない。国内市場においても、NTTドコモが北欧ベンダーであるスウェーデン・エリクソン製基地局の調達を拡大した結果、NECや富士通のシェアは下落傾向にある。
ビジネス視点:企業戦略の大転換
NECの戦略転換
NECは2025年度を最終年度とする5カ年の中期経営計画の達成に向けて、収益拡大のカギを握る成長事業を立て直す。けん引役としていた第5世代通信(5G)基地局事業が国内外とも設備投資の抑制などで苦戦を余儀なくされている状況にある。
一方、NECや富士通本体の業績は、企業のデジタル化需要によるIT(情報技術)サービス分野のけん引によって絶好調だ。富士通は新光電気工業や富士通ゼネラルといった非IT分野の関連会社の株式を売却し、経営資源のIT分野への集中を加速させている。
富士通の海外展開
富士通が米大手通信事業者による大型案件の受注を決めた一方、NECは基地局事業を抜本的に見直すことを明らかにした。米大手通信事業者AT&Tが12月4日に公表した5G基地局の新たな契約について、富士通の担当者はこうコメントした。
消費者・生活者への影響
国産基地局メーカーの撤退は、一般消費者にとって以下の影響が考えられる:
- 通信品質への影響:海外製基地局への切り替えにより、短期的には通信の安定性に不安が生じる可能性
- セキュリティリスク:国産技術からの脱却により、通信インフラのセキュリティ管理が複雑化
- コスト転嫁:基地局更新に伴うコストが最終的に通信料金に反映される可能性
- 技術的自立性の喪失:災害時などの緊急事態における対応力の低下リスク
専門家の見解
「基地局分野では国内ベンダーと中国・華為技術(ファーウェイ)やエリクソン、ノキアといった海外大手ベンダーとの間で市場シェアはもちろん、性能面でも大きな差が開いていました。NTTドコモがエリクソンの基地局に頼るようになったのも、無理はないと思います」
しかし、「ただし経済合理性や資本の論理に任せたままだと、日本から技術のノウハウや人材が失われてしまうことが一番の課題です」という警告も発せられている。
過去の人員削減の実態
2社はITバブルに沸いた2000年以降、国内の人員削減を繰り返してきた。2000年以降の国内の人員削減数はNECが約1万人、富士通が約1万4000人に及ぶ。
国際比較:世界の通信機器業界動向
グローバル市場では、以下の企業が基地局市場を席巻している:
- エリクソン(スウェーデン):5G技術でリーダー的地位
- ノキア(フィンランド):欧州を中心に強固な地位
- 華為技術(中国):コスト競争力と技術力を兼備
- サムスン(韓国):アジア市場で存在感を強化
この中で、日本の通信機器ベンダーのシェアはいずれも2桁に届かない状況が続いている。
通信事業統合への期待と課題
国内勢で候補として真っ先に挙がるのが、通信機器の名門といえるNECと富士通だ。かつて日本電信電話公社(現NTT)向けの電話交換機を手掛けた「電電ファミリー」の中核2社による統合が注目されている。
統合のメリット
- 規模の経済効果:開発コストの分散と効率化
- 技術力の結集:両社の技術ノウハウを統合
- グローバル競争力強化:海外市場での立ち位置向上
- 防衛・セキュリティ分野での優位性確保
統合の課題
- 企業文化の違い:統合後の組織運営の複雑さ
- 重複事業の整理:人員削減を伴う構造改革の必要性
- 顧客基盤の維持:既存顧客への影響最小化
今後の展望:2026年の注目ポイント
2026年は引き続き、国内の通信機器産業が生き残れるのかも注目ポイントだと思います。以下の動向が予想される:
短期的展望(1-2年)
- 統合協議の本格化:NEC・富士通の通信事業統合に関する具体的な議論
- 防衛分野への特化:民生用から防衛・セキュリティ分野へのシフト
- 海外企業との提携強化:技術補完を目的とした戦略的パートナーシップ
中長期的展望(3-5年)
- 次世代通信規格(6G)への対応:新技術分野での巻き返し
- ソフトウェア中心の事業モデル:ハードウェアからソフトウェアへの完全シフト
- 国家戦略としての通信インフラ政策:政府主導の産業支援策
まとめ
NECと富士通の基地局事業からの撤退は、単なる企業の事業戦略変更を超えた国家的な課題として捉える必要がある。
- 技術的自立性の確保:防衛・セキュリティ分野での国産技術維持が急務
- 産業構造の再編:統合による規模効果と競争力強化が生き残りの鍵
- 政策的支援の必要性:民間企業の努力だけでは限界があり、国家戦略としての取り組みが不可欠
参考情報
- NECが4G・5G基地局の機器開発中止、国産化後退 防衛用は継続 - 日本経済新聞
- 苦境の国内基地局メーカー、NECと富士通の通信事業統合はあるのか - 日経クロステック
- 日本製の通信機器、消滅の危機 基地局は10%未満 NEC・富士通はIT集中 - 日経ビジネス
- 京セラ、スマホ「5G」基地局の開発断念 通信網国産化が後退 - 日本経済新聞
- 富士通、5G基地局で海外大型案件に参画 NECと分かれた明暗 - 日経ビジネス
著者プロフィール
伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ
株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー
IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。
夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。
