ソーシャルコマース新時代の幕開け
2025年6月30日、日本のEC業界に新たな波が押し寄せた。TikTok Shopの日本市場本格参入である。動画視聴と商品購入を一体化させたこの革新的なサービスが、わずか6か月で驚異的な成長を遂げている。
ローンチから6か月で累計流通総額は推計155億円に達し、12月の月間GMV(流通総額)推計値は約60.2億円を記録。この数字は、従来のECサイトとは全く異なる購買体験が日本の消費者に受け入れられていることを物語っている。
想定を超える急成長の軌跡
TikTok Shopの成長軌跡は、業界関係者の予想を大幅に上回るものだった。ローンチからわずか3ヶ月間で、TikTok Shopの売上は約30億円に達し、8月には月間売上約10億円を突破、9月28日には1日で約1億円の売上を記録した。
月間GMVの推移を見ると、その急成長ぶりは一目瞭然だ:
- 7月:約4億円
- 8月:約12億円(前月比成長率+201%)
- 9月:約20.7億円(前月比成長率+73%)
- 10月:約22.1億円(前月比成長率+6.8%)
- 11月:約36.4億円(前月比成長率+68.4%)
- 12月:約60.2億円(前月比成長率+65.4%)
ローンチ後1年(2025年7月〜2026年6月)の市場規模は約500億円(累計)と予測されており、日本のEC業界に新たな成長軸を提供している。
ビジネス視点:企業にとっての戦略的意味
TikTok Shopの急成長は、企業のマーケティング戦略に根本的な変革を迫っている。売上の80%以上は「家電・ガジェット(23.7%)」「美容家電・コスメ(22.4%)」「アパレル(20.2%)」の3カテゴリが占めていることが示すように、視覚的訴求力の高い商品ジャンルで特に効果を発揮している。
注目すべき成功要因:
- 成功するセラーの多くが、LIVE配信や広告プロダクト「GMV Max」の導入などを実施し、ROASの最適化と効率的な販促を実現している
- 「ぞうねこちゃんねる」は2025年11月25日〜29日のブラックフライデー期間にかけて90時間連続ライブ配信を実施し、期間中のGMVが1億733万6,153円に達した
- ライフスタイルカンパニーのMilleFée「リラックマコラボパフ」は初月で美容・パーソナルケアカテゴリの「最高売上動画」1位を獲得
一方で課題も存在する。売上上位50社における日本セラーの割合は約34%で、海外勢が優勢となっている状況は、国内企業にとって参入の機会と同時に競争の激化を意味している。
消費者・生活者視点:購買体験の革新
TikTok Shopは消費者の購買行動に根本的な変化をもたらしている。検索で比較する従来の購買から、動画視聴中に「欲しい!」が瞬時に芽生える偶発購買へと、消費行動は急変している。
従来のECとの決定的な違い:
- 動画視聴から購入までをアプリ内で完結できる新しいEC体験
- おすすめフィードに流れてきた動画やライブ配信を通じて、自分に合った商品を見つけられる発見型ショッピング
- 「#TikTokMadeMeBuyIt」ハッシュタグに代表される「見た → 買った → 紹介した」の連鎖反応
現在、日本においてTikTokは3,300万人以上の月間アクティブユーザーを有しており、うち18~34歳のユーザーが62%を占め、1日当たりの平均使用時間は96分間という巨大なユーザーベースが、この新しい購買体験を支えている。
専門家の見解:業界関係者が注目するポイント
TikTokを中心としたショートムービー領域で広告代理店事業・プロダクション事業を展開するstudio15株式会社の調査では、TikTok Shopの成長要因として以下が挙げられている:
TikTok Shopは、単なるEC機能の追加ではありません。これは、消費者の購買行動そのものを根本から変える可能性を秘めた「ショッパーテイメント」という新しい概念の到来を意味します
一方で、専門家は課題も指摘している。日本で本格ローンチしたばかりのため、「こうすれば絶対に売れる」という確立されたノウハウがまだ市場に存在しない状況で、海外の成功ノウハウを知る競合は、あっという間にあなたのはるか先へ進んでしまうリスクがある。
国際比較:海外での同様の動き
TikTok Shopは既にグローバルで大きな成功を収めている。シンガポールのTikTok Shop専門調査会社Tabcutによると、GMVは21年の約1350億円から24年には約4兆9800億円という猛成長を見せた。
主要市場での展開状況:
- 東南アジアでは、TikTok ShopのGMVが2022年44億ドル → 2023年163億ドルへと急拡大
- グローバルを見ると、2024年は332億ドル(うち米国が90億ドル規模で最大市場に)
- TikTokはリスク分散の一環として、2025年内にイタリア、ドイツ、フランスの欧州3カ国のほか、ブラジルでもTikTok Shopのサービス開始を計画
ベトナムの消費者に向けた新たな販売チャネルとしてTikTok Shopを立ち上げた「Kiehl's」は、30日間で40回ものライブ配信を実施し、美容クリエイターやKiehl's社内エキスパートが出演することで、単なる商品紹介ではなく教育型かつストーリーテリングを組み込んだコンテンツに成功している。
今後の展望:予測される影響と注目ポイント
TikTok Shop日本市場の今後の展望は極めて明るい。ローンチ後1年(2025年7月~2026年6月)の市場規模は約500億円(累計)と予測されており、これは日本のEC業界全体にとって新たな成長エンジンとなる可能性を示している。
注目すべき今後のトレンド:
- ライブ配信画面に購入ボタンや商品リストを表示し、視聴者はコメントで質問しながらリアルタイムで買い物できるライブコマースの拡大
- GMV MAX キャンペーンは TikTok Shop の流通総額(GMV)と投資対効果(ROI)の最大化を目的とした広告キャンペーンによる効率化の進展
- 月間アクティブユーザー(MAU)は4,200万人超、およそ3人に1人の日本人が利用する規模に達している巨大市場での更なる浸透
一方で、TikTokは拡散力が非常に高いプラットフォームであるため、一度ネガティブな評判が立つと、瞬く間に広がってしまう「炎上」のリスクも存在し、企業には適切なリスク管理が求められる。
まとめ
TikTok Shop日本市場の急成長は、単なる新しいECチャネルの登場以上の意味を持っている。以下の3つのポイントが特に重要である:
- 市場規模の急拡大:ローンチから6か月で累計流通総額155億円、12月単月で60.2億円という驚異的な成長が継続
- 消費者行動の変革:検索で比較する従来の購買から、動画視聴中に「欲しい!」が瞬時に芽生える偶発購買への転換が加速
- 新しいビジネスチャンス:「ショッパーテイメント」という新しい概念により、エンタメとコマースの融合が本格化
日本のEC業界は今、歴史的な転換点に立っている。TikTok Shopの成功は、動画コンテンツと商取引の融合が新たな成長領域であることを明確に示しており、企業にとっては早期参入による先行者利益の獲得が重要な戦略となっている。
参考情報
- TikTok Shopとは?日本での成功事例7選と導入方法を解説 | フリースタイルエンターテイメント
- 【市場動向調査】TikTok Shop日本市場、ローンチ後1年で約500億円規模へ | studio15株式会社
- 「TikTok Shop」はローンチ1年で500億円規模へ【studio15が調査レポート公開】 | 日本ネット経済新聞
- TikTok Shopの日本・海外事例まとめ|ショップの成果・主要機能・市場動向 | テテマーチ株式会社
- 【最新】TikTok Shop 日本市場 2025年12月レポート公開 | テレ東プラス
著者プロフィール
伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ
株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー
IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。
夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。
