従来の銀行がスタートアップ融資に本格参入
株式会社りそな銀行とスタートアップ向け融資事業を手掛ける株式会社Fivotは11月27日、31億円規模の融資ファンド「RFCベンチャーデットファンド1号投資事業有限責任組合」を共同設立した。この取り組みは、日本のスタートアップエコシステムにとって重要な転換点となる可能性がある。
日本企業の99.7%を占める中小企業は経営者の高齢化などを背景に減少傾向にあり、スタートアップ企業は日本の未来を担う成長のドライバーとして期待されている。従来の銀行がこうした新興企業への融資に本格参入することで、資金調達手段の多様化が期待される。
ファンド詳細:31億円規模、100社への融資を想定
資金構成と投資規模
運営を担うFivotが1億円、りそな銀行が30億円を出資し、1件あたり平均4,000万円、最大3億円を融資する。ファンドの運用期間は原則4年で、計100社程度の融資を想定している。
融資対象とステージ
このファンドは、シードからミドルステージの国内スタートアップ企業向けの融資拡大を目的としている。りそな銀行にとって「シード」と呼ばれる創業期の企業への融資は初の取り組みとなる。
AI技術による革新的な審査システム
審査期間の大幅短縮
従来は3~4カ月かかる審査期間を10営業日程度まで短縮できるとりそな銀行は説明している。この大幅な短縮を可能にするのが、Fivotの持つAI技術だ。
Fivotは銀行の入出金データやウェブ上にある膨大な企業情報をAIで取得・解析する技術を持つ。最先端テクノロジーとAI技術を活用したオルタナティブデータの収集・分析と、それによる事業性評価により、迅速かつ柔軟にスタートアップ企業へ融資を実行する。
オルタナティブデータの活用
オルタナティブデータとは、主に金融領域で伝統的に使われてきた決算書ベースの財務情報や経済統計ではなく、会計データ、銀行入出金データ、決済データ、Web上の情報ソースなど新たに活用可能となった代替的なデータ群の総称である。
Fivotのテクノロジーにより、仕訳帳や銀行の入出金データの整理・分析を自動化することで、融資審査プロセスを省力化し、業務効率化を実現する。
ビジネス視点:企業と経営者への意味
スタートアップ企業にとってのメリット
- 資金調達手段の多様化:従来の株式投資に加え、希薄化を抑えたデット融資の選択肢が拡大
- 迅速な資金調達:従来の3-4カ月から10営業日への大幅な審査短縮
- 創業期からの支援:シード期という早期段階から融資対象となる
りそな銀行の戦略的意図
りそな銀行はスタートアップに融資する「ベンチャーデット」などの実行額を2026年度からの3年間で900億円増やし、28年度に累計1000億円にする目標を掲げている。
りそなホールディングスの南昌宏社長は「資本面の蓄積が進み、本格的に活用するフェーズになってきた」と語っており、自己資本比率も健全な水準を維持している。
消費者・生活者への影響
このファンド設立は、一般消費者にとって間接的ながら重要な影響をもたらす。スタートアップへの融資拡大により、革新的なサービスや製品を開発する企業が資金調達しやすくなることで、最終的に消費者の生活を向上させる新技術やサービスの市場投入が加速される可能性がある。
また、Fivotのようなフィンテック企業が金融業界に参入することで、従来の銀行業務のデジタル化が進み、個人向けの金融サービスも利便性が向上することが期待される。
Fivotの実績と背景
Fivotは2019年に設立され、スタートアップ向け融資事業「Flex Capital」と個人向けキャッシュレスアプリ事業「IDARE」を展開している。最先端テクノロジーとAI技術による独自のスコアリングモデルを活用したスタートアップ向け融資事業は2021年の事業開始以降、累計融資額120億円を突破している。
りそなイノベーションパートナーズの原田雄史社長は、Fivotのユニークなビジネスモデルについて「個人の資金の流れとスタートアップの成長資金をテクノロジーの活用によりつなぐという発想は、銀行の常識から見ても極めてユニークで、チャレンジャーバンクの一つの理想形」と評価している。
国際比較:海外ベンチャーデット市場の動向
アメリカのベンチャーデット市場
アメリカではベンチャーキャピタル投資額がGDPに占める割合が0.40%となっており、日本(0.03%)に対して10倍以上の差がある。米国におけるベンチャーデット市場規模は2021年時点で約331億ドル(約3.7兆円)で、2011年の50億ドル未満から10年で6倍以上に急成長している。
主要プレイヤーとしてシリコンバレー銀行(SVB)が挙げられ、40年近い歴史を持ちスタートアップ企業向けの融資商品を初めて生み出した銀行とされている。
欧州の状況
国際比較では、VC投資額の対GDP比率で米国、中国、イスラエルが上位3カ国となっており、いずれも0.35%以上の水準である。日本の数値は0.030%で、米国の1/10以下となっている。
今後の展望と注目ポイント
日本のスタートアップエコシステムの変化
今回のファンド設立は、日本のスタートアップ融資市場における転換点となる可能性が高い。従来、日本のスタートアップは株式投資による資金調達が中心だったが、ベンチャーデットという新たな選択肢が本格化することで、資金調達の多様化が進むと予想される。
他金融機関への波及効果
りそな銀行の取り組みが成功すれば、他の大手銀行や地方銀行も同様の動きを見せる可能性がある。AIを活用した与信モデルの有効性が実証されれば、金融業界全体のデジタル化が加速することも期待される。
リスクと課題
りそなイノベーションパートナーズの原田社長は、「バブル崩壊やリーマンショックのようなマーケットの変動に対して、Fivotの与信モデルがどのように反応し、会社としてどのように対応していけるかは未知数」と指摘している。
また、「審査のさらなるスピードアップや資金調達コストの改善」といった課題も残されている。
まとめ
- 革新的な審査システム:AI技術により審査期間を従来の3-4カ月から10営業日に短縮し、スタートアップの資金調達ニーズに迅速対応
- 融資対象の拡大:シード期という創業初期段階から融資対象とすることで、従来の銀行では対応困難だった企業への資金供給を実現
- エコシステム活性化:31億円規模のファンドにより約100社への融資を想定し、日本のスタートアップエコシステム全体の底上げに貢献する可能性
参考情報
- 株式会社りそな銀行と株式会社Fivotによるベンチャーデットファンド設立について|りそなホールディングス
- りそな銀行、フィボットと新興向け融資 31億円ファンド設立|日本経済新聞
- 株式会社りそな銀行とのベンチャーデットファンド設立について|株式会社Fivot
- RFCベンチャーデットファンド1号設立について|PR TIMES
- 銀行の常識を変革する存在へ|株式会社Fivot
著者プロフィール
伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ
株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー
IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。
夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。
